抽象画家川上遥かと、写真家Cashipanによる創作ユニット。
2023年AMOSTYLEクリエイターズプロジェクト受賞。
2026年3月にユニットとして初めての個展を開催。

ハルカシパン個展『インクルージョン』

halcashipanの作品は、印刷した写真の上に絵の具で描き加えることで、絵と写真の境界が曖昧に溶け合い、一体となるように制作しています。

今回の個展で展示するアクリルレイヤーシリーズは、多層構造で色や影が写真の“肌”の上に重なり、見る人の立つ位置や光の当たり方によって揺らいで見えます。それは「単純ではない人の内面」や「本質」を表現しています。
人は誰もが、清と濁をあわせ持っています。矛盾する要素が同時に存在し、重なり合い、影を落とし、ときに揺らぐ…目には見えないそれらは、だからこそ美しい。halcashipanの作品は、そのあり方を肯定する行為でもあります。

このシリーズは、展示以外ではほとんど公開していません。画面越しでは、作品が持つ本来の質感や奥行きが十分に伝わらないためです。透明な層がつくる奥行きと、光を受けて立ち上がる微細な表情の変化を、ぜひ会場でご覧ください。

会期
2026年3月12日(木) ~ 3月16日(月)
開館時間
13:00 ~ 19:30 (最終日は18時まで)
観覧料
無料
お問合せ
川上遥か Instagram
会場
ギャラリー懐美館 (なつみかん) 代官山
東京都渋谷区恵比寿西1-31-14 グリーンマンション1F

川上遥かよりメッセージ

人の内包するものは単純ではありません。どんな人にも、やさしさ、いじわるさ、悲しさ、純粋さ、ずるさ、あほらしさ、愛らしさ。そんな要素すべてがあります。
いくら装ってみても、否定しても、それらの自分の本質は奥底にあって消えることはありません。

一方、人は社会生活を営む中で、本音を隠したり、建前を使うことがあります。
「こうあるべきだ」とか「わたしはこう見られたい」等認識するとき、自分という存在を限定的に定義づけてみせたりします。その建前や定義づけは必要なときもあるかもしれないけれど、逆に「自分はこういう人だ」ということに縛られて、他にも多様にある自分の本質を見失ってしまうことがあるのではないでしょうか。自分の一部を否定したまま生きることは出来ません。

裸はありのまま何も包み隠すことのできない無防備な状態です。
衣服を着て装っているときよりも、本質に近い状態だと思います。窮屈な定義づけを取り外したその無防備さは、弱くて、強くて、自由です。それは忘れてはいけない生き物の本質だと思うのです。

halcashipanの作品では、裸の写真を用います。
意図的ではない、ありのままの自身の身体を写真に写し出しています。それでも、本質の様々な要素は目には見えません。裸の上に更に絵を描くというのは、その目に見えない要素を可視化する行為です。様々な色で彩り、あるいは汚すように、影や光、隠したいもの、さらけ出したいものを何層にも重ね、内面を投影させています。隠してしまった、忘れてしまった本質を形にできるように。

写真において、描くことにおいて、自身の身体と内面をさらけ出す行為は、とても勇気の要ることでした。しかしこれはhalcashipanでしか表現し得ない、大切なものだと感じています。

inclusion(インクルージョン)・・・
中に含まれるもの、含有物。内包物。 鉱物においては、形成過程でその内部に捕捉された物質を指す。

Cashipanよりメッセージ

カメラを通して人と向き合うほどに、人は「こう見られたい」というベールをまとい、別の誰かへの憧れが、いまの自分から距離をつくることもあるのだと感じます。
私たちが日々目にするポートレート写真は、果たしてその人を正しく映し出しているのでしょうか。

私はその問いを抱えながら、ベールの奥にあるその人らしさを丁寧に捉え、像として写し出したいと考えています。

カメラはより精細に、目の前の像を写す方向へ進化し続けています。一方で私たちが見ている世界はもっと不確かで、眩しさに目がくらんだり、暗がりの中で輪郭ではなく存在だけを感じたりするようなものです。景色は手軽に切り取られ、画像となり、膨大に収集・消費されていく…。こうした写真を取り巻く環境の進化は、ときに『見る』という行為を置き去りにしてしまうのではないか。

私は、自分の目に映る世界の感覚を大切にし、写真として、曖昧さや記憶の中に残る像の質感を写し取りたいと考えています。

halcashipanでは、写真と抽象画の重なりの中でこの問いへの答えを探しています。写真がとらえた光に絵が応答し、絵が生んだ揺らぎに写真がまた別の表情を返す。その対話の往復のなかで、目に見える像だけでなく、内面の感情や気配までも含めて、一つの作品として形にしたいと思っています。